世界一のクリスマスツリーに心動かされた話

世界一のクリスマスツリー

話題のつきないメリケンパークの「世界一のクリスマスツリー」

 

繁忙期真っ只中であるのに関わらず、このツリー騒動に集中力が根こそぎ奪われておりますので、自分の苛立ちを整理するためにも心情をざっと記録しておこうと思います。

私的な内容につき、一部感情的な表現になるかもしれません。ご容赦くださいませ。

 

 

巨大ツリーを彩るのは偽善と自己満足

 

「メリケンパークに世界一高いクリスマスツリー立てるイベントがあるらしい」
と最初に聞いたのは10月でしたでしょうか。

 

元々そういうイベントごとにはとんと興味を持ちませんので、そのときは
「またどうでもいいイベントするんだな。まぁ勝手にやってくれ、メリケンパークなら特に交通の邪魔にもならないしどうでもいいよ」ぐらいにしか思っておりませんでした。

 

実際すぐに忘れました。

 

 

そして11月17日、市場にあるテレビでたまたま「植樹式」の生中継を目にすることに。

 

テーマが震災の鎮魂? 鎮魂のために生きた樹を引っこ抜いて移植? いや、移植するのにあの根の大きさじゃ無理やろ。

 

 

ツッコミどころ満載でしたが、私が衝動的に某SNSに書いたのがこちら。

 

阪神大震災から20年以上がたった。あの日がっつり被災し火柱に飲まれた人も目の当たりにした。慰霊と教訓を伝えていかねばならないことは分かる。 しかしながら、昨今よく見られるのは慰霊や復興を笠にきた偽善的かつ自己満足的なイベントばかりで気持ち悪い。
自然の猛威を肌で感じ恐怖した震災の慰霊に、人為的に運んできた自然の樹を人工的に飾り立てるという壊滅的なセンスの無さには脱帽する

 

 

衝動的に書いた割には的はずれてません。

 

そのときは「移植」と思っていたので「あれだけの根っこであんな潮風浴び続ける場所で長くもつだろうか。鎮魂で持ってきて枯れたりしたらやばいんじゃないのか」と考えておりましたが、数時間後にはどうやら1ヶ月ほどで切り倒されフェリシモさんからバングル、いやバングルと呼んでいいのかも怪しいものに加工され販売されると知ることに。

 

 

フェリシモさんといえば、先の神戸別品博覧会や母子手帳、4年後に開業予定の神戸港の複合施設に移転などやたらと神戸市に絡んでいる企業。

 

 

そして少し調べてみると、樹を運んできた首謀者、プラントハンター西畠氏なる人物も少なからず神戸で色々仕事している人物。

 

 

なんでしょう、この見え見えの商売っ気。

 

綺麗ごとばかり並べていますがどこからどう見てもただのビジネス。

 

べったりどっぷりの醜悪さにも反吐が出そうですが、鎮魂だとか復興だとかをだしに使わないでください。気分悪いので。

 

 

この後、次から次へとボロが出てきて

 

  • 元々は違う企画で用意していた樹が卸し先を失って神戸が選ばれてしまった(引き受けた?)こと
  • 用意していた感動ストーリーの信ぴょう性の無さ
  • 糸井重里氏ひきいる ほぼ日 やツタヤさんをはじめ大小の複数企業とテレビ各局が関連事業を展開
  • 現場の安全対策はまるでなし
  • 設置の工事も驚くほど杜撰
  • とにかく芸能人を多用して綺麗ごとストーリーを貫徹
  • 市民からの意見・批判をどこまでも無視
  • 「見るのが嫌なら見なくていい」発言
  • オーナメントが風で飛ばされる。スタッフはそれを放置。
  • そもそも、あすなろの樹でさえなかった

などが発覚したのはご存知の通りですので詳しくは書きません。

炎上芸術と呼んでもいいぐらい立て続けでした。もしや意図的?とさえ思いました。

 

しかし普段の私なら、この程度は看過できそうな気がします。

仕事の杜撰さはプロとして失格だろうと思いますし、批判される覚悟がないのなら表現者なんてやめてしまえとも思いますがそこまで気にしていられるほど暇ではありません。

 

 

なのに、どうして今回に限ってはこれほど心がざわつき苛立っているのか。

自分でも不思議でしたので冷静に客観性を心がけて考えてみましたが引っかかるのはやはり一点だけでした。

 

 

 

どんなに復興しても消えない記憶

阪神・淡路大震災は1995年1月17日。あれから23年近くが経ちました。

瓦礫にうもれていた街並みは整備され新しい景色が生まれ、震災の痛ましさを残すものはほとんどありません。

 

震災を知らない神戸市民も増え、誰もが普通に暮らし、表向きには復興が完了したように見えますし見えましたし、私自身そう思っているふしがありました。

 

 

ところがまぁ何という皮肉でしょう。

プラントハンター氏が鎮魂のシンボルとしたあの樹の姿が、

それに「輝け、いのちの樹」などというコピーをつけたことが、 

胸の奥の奥にしまい込んでいた当時の凄惨な記憶を一気に呼び起こしました。

 

 

鎮魂などと発案したのが実際誰なのかは分かりませんが、その方に誤算があったとすれば人間のもろさでしょう。

 

どんなに月日が経とうとも、街が復興しようとも、個人個人の抱えた傷はやすやすと癒えるものではなかった。そこまで人は強くなかった。

 

悲しみだったり無力感、絶望、恐怖、人によって色々な形があるでしょう。それらの 傷を隠し、ゆっくりと時間をかけて馴染ませようとしてきた。

この世界一のクリスマスツリーProjectというイベントは不躾にそこに手をつっこみ、それらを全部引っ張りだした。

 

 

自他ともに認める図太い私がここまで心を乱されたのも、これが最大の原因だろうと。

いい年の大人のつもりですが、23年前の感情を突きつけられただけでこれ程揺さぶられてしまうとは思ってもみませんでした。

 

そういった意味では「心を動かす」イベントですね。間違いなく。

 

 

 

 

当初思っていたよりも数多くの人と予算が絡んでいると思しきこのイベント。
軽々に中止することも変更することも難しいでしょう。

 

ただ安全面だけはしっかり見直してもらいたいところですが。一昨年前にはルミナリエ倒れましたし、今年の10月には神戸で風速45mなんて記録したところですし。

 

関係者に謝ってもらえたら嬉しいわけでもありませんし、正直いって個人的には落とし所が分からないです。

さっさと終わってくれるのが一番です。

 

 

ただ、今後こういったことが他の被災地で繰り返されない為にも、今回のことはしっかりと検証されるべきであり、願わくばハンター氏に「実は。。」とお得意の前振りで全容を話してもらいたいところであり、教訓として活かしていけることを心より願います。

私が落ち着いて仕事できるためにも。

 


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