水無月・なぜ「無」の字?

そろそろ6月。ぼちぼち梅雨ですね。
しとしと降る雨。どこかに溜まった雨が不規則に落ちて来る音も小気味良いです。

以前「皐月」の話を書いたので、今回は水無月の話です。

旧暦の6月は今でいう梅雨明けごろ。
水の無い月 でも意味は通るような気もしますが、「無」が古語の連体助詞で、現代語でいうところの「~の」の意味であるというのが一般的だと思います。(諸説ありますが。)

水無月=「水の月」というわけですね。
では何故、わざわざ「無」の字を使ったのか? を、また手前勝手に解釈していきます。

連体助詞(格助詞)「な」

連体助詞 なんて、学生が終われば一生縁のない言葉だと思っていましたが、まさかこんなブログで使うことになるとは。。 名詞とか、名詞に準ずる連体格の言葉に続く助詞ですね。( 「堪え難きを堪え」の「を」とか。)

しかし「な」という助詞は早い内から現代と同じ「の」にとって替わられており、奈良時代には既に廃れていたという存在感の薄い助詞です。

古語助詞「な」は他にもないのか探してみた

何かのヒントにならないかと、水無月や神無月以外にも連体助詞としての「な」が現代に残っていないか探してみましたら、意外なものが見つかりました。

「渡辺」

『わた・な・べ』の「わた」は「海」だそうで、元々は「海な辺」の意味だそうです。
渡辺さんのご先祖様は海の近くに住んでらしたんですね、きっと。
関係ないですが、渡辺さん、渡部さん、渡邊さん。 ワタナベさんって結構色んなバリエーションありますよね。

他にも「掌(たなごころ)」なんかも、「手 な 心」から来ているそうです。

無の漢字の意味、成り立ち

無と舞の漢字の関係性
無の派生として舞が生まれた

助詞としての「無」の話はこの辺にしておいて、漢字としての「無」ですが、
巫女さんたちが神様に踊りを奉納する直前、動きを止めてじっとしている姿を表した象形文字だそうです。
「無」の点4つ(部首「れんが」の部分) が巫女さんたちの足を表しているのだとか。

この足が動き始めたら「舞」の漢字になりますね。よく出来てます。

余談ですが、舞の部首は「」(まいあし)
最近ニュースでよく見かける漢字ですが、舛の意味は「背く・たがえる・乱れるだそうです。
やはり、名は体を表すんですかね。

無という漢字、成り立ちから分かるように元々は「まい」と発音されており、「無い・存在しない」という意味でもなく「大きい・広い・豊かである」など、かなり現在とは対極の意味で用いられていたようです。

無に草かんむりつけたら「蕪(かぶ・かぶら)」ですもんね。
「大きなカブ」なんて絵本もあるぐらいなのに、どうして蕪に「無」の字が入っているのか不思議だったのですが、水無月調べてて分かるとは思ってもみませんでした。

で、いつから無が今の「無」になったのかは定かではありませんが、漢字を持たなかった「ない」という言葉に、読みが似ている「まい(無)」を当て字的に使っていたのが定着したそう。

水無月という字が生まれた奈良時代以前には、まだ無は否定的な意味を持ち合わせていなかったんでしょうね。

旧暦6月は水田に水を引き始める時期。
水無月が、水が豊かな月 水の豊富な月 を表しているのかと考えると、豊作を願った当時の人々の気持ちが垣間見える気がします。

天候異常からくる野菜の収穫不足が続く昨今ですが、少しは収まってくれますようにと願いつつ、それではまた。


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